今回比較したツールは以下の5つです
ある小売業のお客様で「販売管理システムからCSVを出力して、kintoneに定期的にインポートしたい」という要望がありました。
インポート作業は毎日定期的に数回発生するため手動でのインポートはNGで、自動化してほしいということでした。大きな要件としては以下の点です。
- kintoneの管理画面を使わずに手動ではなくバックグランドでCSVを登録してほしい
- CSVのカラム名はkintoneのフィールドコードと異なるためこれに対応してほしい
- レコードの追加だけではなく更新にも対応してほしい
- コストは月1万円以内
「kintoneの手動インポート」は私自身も苦手な作業でありまして、毎回CSVカラムとフィールドをマッピングするのが面倒なのと、キーを間違えるとレコードが多重登録されてしまい、データを削除してから再度登録する必要があるなど、運用中のアプリに対する作業としてはかなりストレスがかかると感じています。

そこでいくつかのベンダーさんからリリースされているCSVの自動インポートツールを比較検討した結果についてこちらにも書き残しておきたいと思います(2022/12時点)。
kintone コマンドラインツール(cli-kintone)
1つ目のツールは「cli-kintone」です。(これ発音は「クリキントン」でいいんでしょうか?笑)
サイボウズ社が提供する無料のCSVインポートツールです。このツールはインポートだけではなくエクスポートもできるのでkintone上のデータをやり取りするための機能が一通り揃っています。

ただし、元々が開発者向けツールでもあることから、コマンドライン(MS DOSの黒い画面)で操作を行うことが必要です。このため、ある程度のコマンド知識を求められることと、今回のケースのようにCSVファイルを何度もインポートするには、このツールに対して追加の作り込み(プログラミング)をしないと、適用が難しいと判断しました。
ツール自体は無料ですが、今回の要件に合わせていくには初期の開発費用がかかってしまうのがネックとなりました。
Smart at tools for kintone CSV入出力
ここからは有料のツールです。
M-SOLUTIONSが提供するSmart at toolsシリーズです。このツールもCSVのエクスポートを含めてインポートに対応しています。
さらに、CSVのカラムとkintoneのフィールドコードをあらかじめマッピングすることができます。これによりインポートするたびにいちいちマッピングをする必要がありません。

CSVを登録するタイミングですが、CSVファイルをインポートする時間をあらかじめスケジューリングできます。スケジュールされた時間になるとフォルダ上のCSVをkintoneに登録開始します。
利用コストは、kintoneのライセンス数などにより変動し、今回のお客さまは60ライセンスということで「ライトプラン」となり初期費用10万円 、年額36万円(設定数10まで)という価格感でした。
krewSheetで有名なグレープシティの製品です。フィールドマッピングやスケジュール実行などの機能はSmart at tools for kintoneと同じスペックを有しています。
ただし、CSVファイルの投入先はDropboxなどのクラウドストレージである必要があります(通常のローカルのフォルダは不可)。このため別途クラウドストレージの契約が必要です。今回のお客さまはこの点がネックになりました。
なお、CSV投入先がクラウドストレージであるメリットは、Windowsにインストールするモジュールが必要なくWeb上で完結することです。もしすでにクラウドストレージが入っている環境であれば適用できるケースも多いと思います。
コストは月額13,200円からで変換設定の数や登録データ数などでさらに課金されていきます。この点ではちょっと使いにくいかなと感じました。
DataSyncer for kintone
続いてクラフテクスが提供するDataSyncer(データシンカー)です。
こちらはエクスポートに対応はしていませんが、インポートに特化した構成のため、痒いところに手が届く様々な機能が実装されています。(あらかじめフィールドをマッピングできるところは他のツールと同じです)

CSVデータの登録は、CSVファイルがフォルダに置かれると自動で登録が開始されます。このためほぼリアルタイミングでの登録が可能になります。逆にスケジュール実行する機能は備えていません。
今回はこのツールが採用となったのですが、決め手となったのは「登録時にCSVの文字列を事前変換する機能」があったことです。例えば、価格などの「数値フィールド」でありがちな「CSVデータにカンマが入っているとインポート時にkintone側でエラーになる現象」への対応が可能です。
設定画面でカンマ文字の削除設定をすれば、CSVデータの数値欄にカンマが入っていても取り除いた(10,300 → 10300)状態で、kintoneに登録してくれます。

この機能がないと、あらかじめCSVファイルを開いてカンマを取り除くことが必要が出てきてしまうため、登録作業自体に人手を介すことになってしまい、今回の要件を満たすことができませんでした。
もう一点はコストです。初期費用9万円+年間料金も9万円ということでその他のツールと比較するとリーズナブルという判定でした。
最後は日立ケーイーシステムズが提供する「基幹連携ツールPro」です。機能面では他3社とほぼ同じで、事前の文字列編集機能は、四則演算、空白除去、桁合わせ、自動採番、文字列結合が可能ですが、特定の文字を削除する機能はありませんでした。
コスト面(初期費用36万円、年間12万円)もネックとなり今回は見送りとなりました。
番外編 その1
異なるデータ間を連携するツールは以前から「EAI / ELIツール」という分野が存在します。
これらのツールでももちろんCSVファイルをkintoneに取り込むことはできますが、コスト面で「桁が違う」ため今回は検討には入りませんでした。(一般的に企業内に多数のシステムが存在する大企業向けのツールなため機能も値段もそれなりです)
代表的なツールとしてはアステリア社のASTERIA Warp や、セゾン情報システムズのDataSpiderがあります。(ちなみにDataSpiderはセゾン情報にM&Aされる前はアプレッソという独立系のIT企業で、CEOの小野さんという方には技術者としてかなり影響を受けた一人です😊)
番外編その2
CSVをkintoneにインポートするのにRPAツールを使うという選択肢もあります。手動でのkintoneアップロード画面をRPAで操作するシナリオを書くことで実現できます。
ただし、私の経験上、APIを備えている製品(kintone)との連携ではRPAツールは使わない方が良いとの考えです(RPAはあくまでAPIが使えない製品に対してのみ、限定的な条件下で使うべきです)。
開発の初期費用はともかく、運用中のメンテナンスに掛かるコスト(RPAはその性質上さまざまな環境変化に影響を受けます)を考えると、素直にAPIを叩くか、APIを使うツールを採用する方がトータルコストを抑えることができるからです。(RPAの適用シーンについてはおいおい記事にしていきたいと考えています)
ーーー
いかがでしたでしょうか。
一口に「CSVファイルとkintone連携」といってもその用途や要件により採用するツールが変わってきますので、各社のトライアルライセンスなども試しながら最適なツールを選択していただきたいと思います。
#画面ショットは各社のH Pから転載させていただきました